Alchemist’s Greeting / 錬金術師の挨拶 (4)(赤)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。錬金術師の挨拶はそれに4点のダメージを与える。
マッドネス(1)(赤)(あなたがこのカードを捨てるなら、これを追放領域に捨てる。あなたがそうしたとき、マッドネス・コストでこれを唱えるか、これをあなたの墓地に置く。)「すごいわね。」――チャンドラ・ナラー
錬金術師の挨拶は突然行われた。
12月3日にMTGアリーナ専用フォーマット「アルケミー」が発表された。今回はアルケミーについて思考をまとめるのでお付き合いいただきたい。《錬金術師の挨拶》は手札から捨てておく。
「アルケミー」の意図
MTGアリーナ登場以降、その手軽さからプレイ人口、プレイ回数が爆発的に増えたことにより、スタンダードの攻略速度が飛躍的に向上。メタゲームの解明速度が速く閉塞感すら生じていた。
ざっくり言うと『最強カード』がすぐに発見され『最強デッキ』誕生が凄まじい速さとなった。
さらに、ランクや順位を競う仕様。それらに興味がないカジュアル層でも、デイリーミッションを効率よく消化するために『最強デッキ』でプレイされることが多く、これは飽きる速さにもつながっている。もはや現状の3か月ごと新セット発売ペースでは追いつける速度ではなくなっていた。
そこで創設されたのが12月9日実装の新フォーマット「アルケミー」である。『最強カード』の弱体化とそれまで日の目を見ていなかったカードの強化を施した「再調整カード」。MTGアリーナ独自、それもデジタル特有の紙では実現しにくい効果の「追加カード」の投入により、スタンダードに変化を加えていこうというのが狙いのようだ。
従来のスタンダード自体に変更はなく、アルケミーが追加される形となる。また、これら「調整版」「追加カード」はヒストリックでも使用可能。図にするとこうなる。
これで伝わるかな・・・。
再調整
アルケミー実装に伴い、現行スタンダードから11枚のカードに調整が施される。
《アールンドの天啓》 | |
1/1飛行の鳥トークンが予顕からでないと生成されなくなった。予顕したカードはそのターン中プレイできないため、《アールンドの天啓》連打で鳥トークン量産勝利がしにくくなる。さらに《感電の反復》でコピーされてもトークン生成が行われない。 |
他の調整カードはその意図を記した記事があるのでそちらを参照。
いわゆるテキスト変更やパワーレベルエラッタは、実際に紙へ印刷したカードで行うテーブルトップでも行われていたが、可能な限り印刷されたとおりにプレイ可能とする理念の下、近年ではほとんど行われていなかった。(『イコリア』での相棒ルール変更、クリーチャータイプ「ファイレクシアン」の追加程度)
その結果が『灯争大戦』以降の禁止カード量産へと繋がる。そこで、禁止カードではなく、再調整を加えたカードを別に作成し差し替える、デジタルだからこそ可能な解決策を計った形となる。カード名の前に「A」の記号とスタンプがついた「同じ名前の別カード」というちょっと厄介な代物で、再調整が存在する前提で挑むアルケミーならまだしも、混在することとなるヒストリックではどうなってしまうのか心配ではある。
再調整カードは、作られるたびにすでに所持している枚数分配布される。以降はパックやワイルドカード使用で入手するたびに同時に再調整版も手に入る。
スタンダードとアルケミーを自由に行き来しやすくするための措置とのこと。
追加カード
新規メカニズムを有するデジタル専用サプリメントセットを発売し、新規カードが追加される。まずは『アルケミー:イニストラード』で60枚。今後は新セット発売1か月後に30枚程度のサプリメントセットを発売予定。
現在はこの『アルケミー:イニストラード』のプレビュー期間で、新カードが順に公開されて行っている。イニストラードの世界観に合ったカードが中心で、既に《墓後家蜘蛛、イシュカナ》の新カードがお目見えしている。
今回はスタンダードの範囲すべてに視野を入れており、『カルドハイム』に座す神の一柱トラルフに関連したカードも。
これらのように、メインセットで収まりきらなかった部分や登場人物、蜘蛛を掘り下げることができる設計にもなっている。
追加カードは、スタンダードとローテーションを共にし、同じタイミングでスタンダードから去る。ヒストリックではそのまま使用可能。
感想文
デジタル、というかMTGアリーナを主軸に据えようとする意図を感じる錬金術。結局のところ、やってみないとわからないものではある。
私は永らく紙の、テーブルトップに親しんできた層である。これも時代の変化だろうと受け入れる面と、言語化しにくい拒絶ともいうべき感情が混在している。スタンダードが無くなるわけでも、紙が発売されなくなるわけでもないし、今やほとんどMTGアリーナでプレイしているのにもかかわらず、どこか寂しさに似た感情がある。「MTGが終わった」のではなく「MTGは変わろうとしている」と受け取っている。事実、そうだろう。
競技面に微塵も興味がなく、気になったカードで意図したとおりに動くようデッキを組んだ自己表現、創作の「ジョニー」的な楽しみ方が再調整版カードで潰されかねないことに起因しているかもしれない。その再調整されたカードは強弱ではなく使いたいから使っていた。私は『カードに使われるのではなく、カードを使いたい』のだ。
追加カードに既存の登場人物、特に好感の持てる人物が割り振られ、紙のカードで手に入れる手段がないとやはり悲しい「ヴォーソス」面もある。
とは言っても、スタンダードを楽しんだらブロール、ヒストリックブロールとフォーマットを行き来している部分にアルケミーが加わるだけかもしれない。スタンダードに飽きてしまったときの駆け込み先が増えたと喜び勇んで飛び込むかもしれない。再調整や追加カードが面白ければ、何食わぬ顔でプレイに勤しんでいることでしょう。こんにちは、アルケミー。おかえり、イシュカナ。
フレイバーテキスト
調整が入ったカードは言ってみれば「そのままだとスタンダードでは強すぎるカード」。これはテーブルトップにおいてそのカードを敬遠する動きを作りはしないかと不安があります。
アリーナであれば禁止カードにはワイルドの補填がされますが、現実で払ったサイフポイントは戻っては来ないのですし、より一層の紙離れが進んでしまいそうで……