Dimir Signet / ディミーアの印鑑 (2)
アーティファクト
(1),(T):(青)(黒)を加える。ディミーアの印は秘密のギルドの紋章であり、それを見ることのできるのは自分たちの仲間たち ――― そして消し去られる運命の者だけだ。
ディミーア最初の印章は当時最強の2色だから最強ギルドだろと思ったら主戦略がまさかのライブラリーアウトだしカードパワー抑えられてるしちくしょう!バランスとやがったなウィザーズ!でした。
『ラヴニカ:ギルドの都』初出のコモン。ギルドのシンボルを象ったマナフィルターでありながら、無色1マナを有色2マナへの変換なのでマナ加速としても機能する優秀なアーティファクト。
2色の組み合わせ10組の各ギルドに存在し、《ディミーアの印鑑》は青黒のギルド「ディミーア家」に対応する。
いずれも性能は同一のもので、その採用基準は色の特徴により左右された。
コントロールデッキの代名詞である青と黒。特にスタンダード当時を象徴するフィニッシャー《夜の星、黒瘴》へ繋ぐ黒マナ供給源として三色デッキで広く採用された。
まずは【アネックスワイルファイア】。対戦相手の土地を奪う《併合》に、お互い土地4つ生贄の《燎原の火》を組み合わせた畜生デッキである。
《燎原の火》を免れるアーティファクトである「印鑑」でマナの優位、4点ダメージを生き残る《夜の星、黒瘴》《潮の星、京河》で戦力の優位に立つ本当に畜生デッキである。友達無くすぞ。
次に【太陽拳】(ソーラーフレア)。《強迫的な研究》などの手札入れ替え呪文で大型クリーチャーを捨て去り、《ゾンビ化》や《戦慄の復活》で戦場に釣り上げるリアニメイトデッキである。
《神の怒り》で戦場を整え、手札破壊や打ち消しでリアニメイトを通すシンプルかつ奇襲性のあるデッキとなる。お察しの通り、デッキ名の由来は《絶望の天使》のハg
青と黒の純正ディミーアが力不足でコントロールデッキに難儀する中、しっかり印鑑だけは出回ることで「ディミーア家って本当にあるんだ」と印象付けたのだった。《ディミーア家の護衛》のオルゾフへの出張振りは大したものだが、印鑑も似たようなものである。
これだけで話が終わってしまうので、「ディミーアの昔話」をしようと思う。まだ「切削」という言葉がなくライブラリーの一番上から墓地に置いていた『ラヴニカ:ギルドの都』発売当初。当時通っていたカードショップにて仲間内でプレイしていたドローカルな印象論。メタゲームが成立する以前の牧歌的なマジックな話になるのを前置きとしたい。
ディミーア変成
『ラヴニカ:ギルドの都』発売時。当時MTGをプレイしていた友人たちの内、私を含む特に熱心だった4人はゴルガリ、ボロス、セレズニアといったギルドを特に担当分けをせずに思い思いにデッキを構築していた。
さて、ディミーアだがーーー。
もはやディミーアといえば「食卓」だが固有能力は「変成」。同コストのカードを手札にサーチする強力な能力である。オルゾフへの出張でお馴染み《ディミーア家の護衛》、現在統率者戦で2マナサーチと打ち消し両面で活躍する《交錯の混乱》はその筆頭だろう。
だが、ディミーアを象徴するカードは《不可思の一瞥》である。
「ディミーア家」は一般市民にその存在すら疑問視される見えざるギルド。創始者《ザデック》の指示の下で工作員たちが諜報活動に従事、影からラヴニカの支配を企てていた。
その活動を反映した「直接的でない勝利」「精神への直接攻撃」として描かれたライブラリー破壊が大きな特徴で、その主軸となるべく登場した切削呪文である。《石臼》こねくり回してる時代に2マナで10枚の衝撃。
しかし、効率の良い切削呪文はこれ1枚。数少ない実用レベルのカードとして『基本セット 第9版』に《心の傷跡》が再録されていたが・・・
なんとかなりそうで、ならなかった。
まず《ディミーアの脳外科医、シアクー》を据えた構築に挑んだ者がいた。
青と黒の呪文を唱えるたびに1枚ずつ追放と非常に悠長。プレイ不可能力が機能するのは極めて稀。なにより、《火山の鎚》《稲妻のらせん》《最後の喘ぎ》が飛び交う世界をただのタフネス3が生き残るのは不可能に等しく、早々に断念。当時の「レジェンドルール」は2枚目の伝説のクリーチャーが戦場に出ると両者が墓地へ送られる「対消滅」の時代で4枚積みもしにくかった。
その彼の遺志を継ぎ【ディミーア】に挑んだのが、私である。
まず《シアクー》路線を捨て去り他の呪文に目を向けたが・・・。
ライブラリーからのXドレイン《精神の吸収》は純粋に効率が悪く、眼前の脅威であるクリーチャーに無力。3マナ3枚のライブラリー操作を行う《ディミーアの策謀》の採用を本気で検討する程厳しい様相。
2021年現在のスタンダードを代表する【ディミーアローグ】とは似ても似つかない状況である。これに関連してディミーアには4マナ4/4飛行という超優秀なクリーチャー《モロイ》が存在するのだが、ただ真っ当に強いだけで1枚も削らない。
当時のディミーアの方向性のブレ、よくわからなさの象徴として印象深い存在となっている。
話を戻す。【ディミーアライブラリーアウト】構築方針としては青黒らしくコントロール路線。とにかくクリーチャーを対処し隙を見て《不可思の一瞥》《心の傷跡》を叩き込む。そして、とにかくクリーチャーを対処して生き延びる。
『神河ーラヴニカ』期では優良除去として広く採用されていた《忌まわしい笑い》と《魂の裏切りの夜》の採用。
《神の怒り》がない色なのでこれらで生き延びる他ないとした。これらが通用する対戦相手には辛うじてゲームになるかどうかで、大体ならなかった。ちゃんと《ディミーア家の護衛》に護衛させ、《幻の漂い》でなんとか生き延びないかと交錯した姿がそこにあった。
『ギルドパクト』『ディセンション』と後続のセットにライブラリー破壊の呪文など増えるわけもない。ろくに強化されることはなくどうせ連発しなきゃいけないし《冥府の教示者》で《不可思の一瞥》サーチすればいいんじゃないかと企んで即断念したりした。ここまではおおよそデッキだったのか怪しい。
その後『時のらせん』ブロック到来、なにより『次元の混乱』。あの《滅び》の登場である。
黒が《神の怒り》を手に入れた。これほど素晴らしいことはない。全財産を注ぎ4枚確保した。
他にも単体除去とライフ回復の延命手段を同時に行う《堕落の触手》を獲得、墓地利用デッキは《根絶》した。こうして本当に【青黒コントロール】にライブラリー破壊を添えた構成が可能となったのである。
しかし過去記事リンクばかりである。当時いかにディミーアをなんとかしようと試行錯誤していたか。その策謀が窺えると思う。
100日後に完成する統率者 21日目
印鑑サイクルは優秀なマナファクトととして統率者戦において広く採用されるカード群のようだ。多色統率者ならば色の合う印鑑をとりあえず採用しておいて何一つ不便はない。
《ディミーアの印鑑》は『モダンマスターズ2017』にて新規イラストが登場。それ以降の再録を重ねている。
例によって採用するのは『ラヴニカ』版となる。思えば《スカラベの神》の方が使用回数が多いな。
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