Kiora Bests the Sea God / キオーラ、海神を打ち倒す (5)(青)(青)
エンチャント — 英雄譚(Saga)
(この英雄譚(Saga)が出た際とあなたのドロー・ステップの後に、伝承(lore)カウンターを1個加える。IIIの後に、生け贄に捧げる。)
I ― 呪禁を持つ青の8/8のクラーケン(Kraken)・クリーチャー・トークンを1体生成する。
II ― 対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーがコントロールしていて土地でないパーマネントをすべてタップする。それらは、そのコントローラーの次のアンタップ・ステップにアンタップしない。
III ― 対戦相手がコントロールしているパーマネント1つを対象とし、それのコントロールを得る。それをアンタップする。
キオーラ、海神を打ち倒すとは犯行現場である。
『テーロス環魂記』神話レア。ドローステップ後に伝承カウンターを置くことで段階ごとに能力を得るエンチャント「英雄譚」。その地に伝わる物語を語る様に設計され、フレイバー面でも機能するカード。
その中でも《キオーラ、海神を打ち倒す》は、【スゥルタイ根本原理】で《出現の根本原理》から用意されるフィニッシャーとして実績が充分なカードであると同時に、プレインズウォーカー・キオーラの旅路を語ったのものでもある。
『テーロス』ブロック終盤に伝説の船乗り「カラフィ」を騙って登場、勇者エルズペスと導師アジャニに助力した後から始まる物語。『戦乱のゼンディカー』中盤に掲載された「海に落ちて」がそのまま忠実に再現された。
キオーラは、故郷である次元:ゼンディカーを貪る怪物エルドラージに対抗できる強大な海の生物を探すべく、次元を超えて旅をしていた。そして、次元:テーロスにて《海の神、タッサ》が有する《まどろむ島、アリクスメテス》に目を付ける。
当然ながらタッサは激怒。アリクスメテスどころかテーロス中の海産物を呼び寄せると、キオーラも次元を超えて自身のクラーケンを召喚。触手入り乱れる一大決戦に。
だが、実際にイカ、タコ、リヴァイアサン、クラーケンまみれにしてしまうと戦場が沈んでしまうので8/8呪禁のクラーケントークン1体となる。
クラーケンについて多元宇宙生物学研究会の見解を伺った。
「テーロスの触手は1/1。本来8/8では8本足のみの試算で本体を考慮していないことになってしまう。しかし、呪禁を有している点から、本体部分が魔法的防御力を担っていると予想される。」
やはり専門家ーーーと言いたいところだが、違和感を覚える。そこで、改めて写真を取り寄せた。
甲殻類だった。海の神秘である。
戦いの中でもキオーラはアリクスメテスを手にすべく意思疎通を図ろうとしていた。しかし相手は海の神。助力を願う彼女声が届くことはなかった。
タッサは二叉槍を掲げ海を割り、キオーラを海底へと落下させてさらに槍を放つ。まさに神速、縮まりながらキオーラを追い立てると、二叉が彼女の首にはまり、岩へと繋ぎとめた。
よって、伝承Ⅱは対戦相手1人の土地でないパーマネントすべてのタップと、次のアンタップ制限。
強調したいのは、一切の身動きを封じるようで土地だけは影響を受けない。つまりは、逃れる余地が残されているのがデザイナーの妙がある。(単純に完全ロックは強すぎるというゲーム上の問題の方が大きそうではある。)
タッサは完全勝利を確信、神へ挑んだことへの愚かさを説き、キオーラもそれに同調する。しかし、それは負け惜しみではない。
キオーラはタッサへと感謝を述べると、そのままーーーすなわち、神器《タッサの二叉槍》を手にしたままでプレインズウォーク。捧げた感謝は槍をくれたことへのものだった。
その後はキオーラ愛用の武器として物語での戦闘描写や後のカード化で携えた姿を見ることができる。
というわけで、伝承Ⅲ。パーマネント1個の永続奪取。対戦相手自慢の逸品を我が物のように扱おう。
《キオーラ、海神を打ち倒す》とはいうものの、実際は倒されていない。だが神格としては完全敗北だろう。
『テーロス環魂記』の頃には、タッサを哀れんだ《鍛冶の神、パーフォロス》に新たな槍を新調してもらいこそしたが、英雄譚としてその痴態を語り継がれるのは相当なストレスに違いない。《深海住まいのタッサ》に搭載された《タッサの激憤》がタップのみとされたことからもそれが窺えるだろう。
海洋冒険の締めくくりとなる海の神と次元超越者による次元規模の決戦。「海の日」に思い起こすには相応しい1枚だろう。
最後に「やり返せ」と「槍返せ」を上手いこと使えなかったのでここで消化する。
フレイバーテキスト
こりゃあ「1本」とられましたなぁ!